i-Construction建設業界の未来に向け、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいます

事業本部 技術部長 北添 慎吾
現在、建設業界全体では慢性的な人手不足が課題となっています。「建設DX」への取り組みは業界全体の生産性と魅力を高めるとともに業務形態を変え、結果として人手不足の解消にも繋がるでしょう。福田道路は建設業界の未来を見据え、AIやICTなどのテクノロジーを積極的に取り入れています。事業本部 技術部長 北添 慎吾さんに、「建設DX」への取り組みと課題、今後の展望など、さまざまなお話を伺いました。
※「建設DX」とは「施工プロセス」に限らず、「調査」「設計」「施工」「維持管理」「サービス」の分野まですべての業務のデジタル化を意味しています。

ICT舗装工(維持修繕)に向けた取り組み

近年測量技術が進化したことで、TS(トータルステーション)の他、レーザースキャナやUAVそしてGNSS(衛星測位システム)を使用したさまざまなテクノロジーの活用が可能になってきました。しかし、舗装に関してはミリ単位の「高精度な測量」が重要となります。「X・Y・Z座標」すべての座標を、極めて正確に把握しなければなりません。設計通りに舗装をしたとしても、測量精度の粗さが「施工ミス」ととらえられる可能性もあります。また測量を外注した場合、測量技術者は土木や舗装の専門家ではないので、測量データに誤りがあっても違和感に気付けない可能性があります。我々舗装技術者はこのような課題をクリアしながら、測量や施工にICTを活用していかなくてはならないのです。

交通を妨げず、測量の生産性を高める移動計測装置・MMS(協力会社所有)

MMS(モービルマッピングシステム)は、走行しながら道路周辺の3次元空間位置データを高精度で、効率的に取得するために開発された移動計測装置です。車両の走行に合わせてカメラやレーザースキャナが周辺の道路構造物をはじめ地形や建物などをマッピングしていく仕組みで、地形測量や地図作成などに活用されています。

人力に比べ車両を走行しながら計測するため、広範囲を短時間でマッピングすることが可能で、自動運転分野では、高精度3次元地図の作成に利用されています。

一般的な乗用車に、GNSS・IMU・オドメトリ・レーザー・カメラを搭載し、一般車と同程度の速度で走行しながら、車線ごとの計測で路面の形状(既設舗装の3Dモデル)と路面性状(ひびわれ・わだちぼれ・平坦性)を同時に取得できるというメリットがあります。また、そのデータをGIS(地理情報システム)に紐づけしていくことで、道路舗装台帳の高度化が可能となります。

何より、「道路を走りながら測量できる」、つまり「交通に影響されずに測量できる」というメリットは大きいと感じています。TLS(地上型レーザースキャナ)を使用した方法では、測量地点を横切った車が、測量データのノイズになるということがありました。しかし、ほかの車と同じように走りながら測量をすれば、車のデータがノイズとして入り込むことはありません。交通規制をかけなければならない場面もぐっと減るでしょう。

とはいえ、いいことばかりではありません。MMSのデータはTLSより精度が劣ります。それを埋めるための評定点が必要になるのですが、評定点の間隔が短いと従来のアナログ測量と比較して生産性向上効果は薄くなってしまいます。また、MMSを扱う技術者は舗装技術者ではないことからデータに不具合があっても気が付かない恐れがあり、実際に使えないデータが提出されることもあるのです。生産性向上を目的とした本当の実用化にはMMSのメーカー技術者・MMSの計測技術者・舗装技術者との連携が極めて重要であると考えています。

BIM/CIMの活用はすでに始まっている

BIM/CIMは、計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図ることを目的としています。
元々、舗装の維持修繕工事は調査から設計までを実質、施工会社が行っていました。したがってICT舗装の維持修繕に取り組んだ時点で調査設計から施工まで、自動的に3次元モデルを連携させることができているのです。今後は、地下埋設物など構造物の3次元モデルへの対応を進めていきます。

「維持管理」「サービス」へ、AIの活用

ビデオカメラを設置した実際の車両

マルチファインアイは、AIを活用した、舗装破損の診断システムです。一般的な自動車に市販のカメラを搭載し、路面の様子を動画で撮影することで、動画を基にAIが路面の破損状況を診断します。またGIS(地理情報システム)による地図情報への紐づけなどが可能になり、このマルチファインアイを使用することにより、点検診断が容易になり低コストでの維持管理サービスが可能になるのです。また、マルチファインアイでスクリーニングした結果を用いて修繕区間を計画し、MMS計測によって舗装修繕の3次元設計につなげるなど、大幅な業務改善が期待されるのです。

「施工」 マシンコントロールの更なる活用に向けて

ICTを活用した施工技術のひとつに、マシンコントロールがあります。先述した測量データを基に、重機操作を一部自動化し、作業の精度と効率を高めるための技術です。

マシンコントロールに関しては、重機の種類ごとに、実用化の度合いが異なります。 福田道路では、

に関しては、すでに一般的な技術として各地で施工されています。 しかし、

に関しては、技術的には進歩しているものの、実用段階であるとは言えません。その理由は「精度」だけではなく、「生産性向上効果」がまだ見えないことにあります。特にアスファルトフィニッシャーに関しては、下地の精度が高ければ従来技術で十分なので、路盤の施工精度を上げることの方が重要なのです。切削機のマシンコントロールはTS(トータルステーション)の設置場所に難があり、GNSSでは精度が得られないなど実用化へのハードルはまだまだ高いと感じています。
しかし、XY座標はGNSSで、Z座標は3次元設計データを使用することにより、新たな可能性が見えてきました。

業界全体の未来のために、建設DXに取り組まなくてはならない

建設DXには課題がたくさんあります。今回紹介したシステムも、実用化に向けた道半ばの段階であり、今後もテストと改善を繰り返していきます。建設DXに向けた最初の取り組み「i-Construction」は、土木や舗装・建設業界の効率化を図るためにはじまりました。
しかし、まだまだ発展途上であり、今は「トライ&エラーを繰り返し、課題を整理する時期」であるといえるでしょう。

「目先のことだけを考えれば、従来通りの方法で、人の手で実施した方が早い仕事もたくさんあります」と、北添さんは本音を話してくれました。「しかし、その苦難を乗り越えなければ、実用化にいたることは永遠にないでしょう。私たちのような、ある程度の規模をもつ会社には、業界をリードしていく責任があるのです」

今はまだ実用段階とはいえないテクノロジーの数々を、実用段階へと推し進めるためにも、福田道路は日々研究・開発に取り組んでいます。実用化までこぎつけた後は、業界全体に普及させることが課題になるだろうとも、北添さんはいいます。

少しずつであっても、より多くの会社にICTを使用した様々な高度技術に取り組んでいってほしいといいます。それは、業界全体の生産性を高めることに繋がります。慢性的な課題である人手不足を解決するためにも、「建設DX」への取り組みは不可欠なのです。
土木、舗装、建築、測量…
分野の違いにとらわれず、一丸となってこの取り組みを進めていくことが、業界全体の未来を明るいものにするはずです。

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